救急・集中治療における生命維持治療の中止・差し控えに関するガイドライン案に対する声明
救急・集中治療における生命維持治療の中止・差し控えに関するガイドライン案に対する声明
2026年3月23日
呼ネット.人工呼吸器ユーザー自らの声で.
代表 安平有希
現在、日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本循環器学会、日本緩和医療学会の四学会により改訂が進められている「救急・集中治療における生命維持治療の中止・差し控えに関するガイドライン」案に対し、人工呼吸器ユーザーおよびその家族、支援者の立場から強い懸念を表明します。
私たち呼ネットは、これまで「2012年 尊厳死法制化に対する反対意見書」の提出や、「2016年 相模原市障害者殺傷事件に対する声明」の発信を通じ、一貫して「どのような障害があっても、その命は平等に尊ばれるべきである」と訴えてきました。
今回のガイドライン案は、私たちの生存の基盤を揺るがしかねない重大な問題を孕んでいます。
- 「医学的無益性」を覆す、地域での豊かな自立生活の実績
ガイドライン案で示された、回復が見込めない場合に治療を終了する「医学的無益性」という判断は、あまりに主観的であり、当事者の実態を無視したものです。呼ネットの代表を含む多くのユーザーが、地域での自立した生活を送っています。人工呼吸器を身体の一部として使いながら、社会の一員として役割を持ち、豊かに生活し続けていることが、安易な「無益性」の判断がいかに誤りであるかを証明しています。 - 「TLT(時間制限試行)」がもたらす生存への脅威
一定期間の評価後に治療継続を判断する「TLT」の導入は、一度開始した生命維持を事後的に打ち切ることを正当化する恐れがあります。これは、常に医療の支えを必要とする当事者にとって、絶え間ない「生存の審査」を受けるような心理的圧迫を与えるものです。医療者が「予後不良」と断定する背景に、重度障害者の日常への無理解がないか、極めて慎重な検証が必要です。 - 家族の犠牲に頼らない支援の拡充
わが国では依然として、重度障害者が地域で暮らすための介助体制が不十分であり、家族に過度な負担がのしかかっています。このような状況下で、家族が「これ以上支えられない」と追い詰められて選ぶ治療中止は、真の「自己決定」ではありません。必要なのは治療の中止ではなく、家族が犠牲にならず、当事者が一人の人間として自立して生きていけるための「社会的資源の拡充」です。 - 意思決定支援とコミュニケーション保障の徹底
集中治療の現場において、人工呼吸器の装着等により意思表明が困難なユーザーに対し、短時間の医療的判断で決定を下すことは、障害者権利条約が掲げる生命の権利を侵害する行為です。本人の日常生活や意思形成の過程を熟知する家族や支援者を交えた、多角的な意思決定支援プロセスの保障を強く求めます。 - 死の議論から「生きる支援」の議論へ
医療の使命は命を救うことであり、救命後には地域生活を支える福祉へとつなぐ地続きの支援が不可欠です。私たちは四学会に対し、当事者団体の声に真摯に耳を傾け、すべての人がどのような状態になっても地域で安心して「生き続けられる」社会の実現に向けた議論を進めることを強く求めます。
以上
【本件に関するお問い合わせ先】
呼ネット.人工呼吸器ユーザー自らの声で.事務局
〒192-0065 東京都八王子市新町2-5 コスモリード八王子2F-15
TEL:042-540-1844 / E-mail:info@conet-net.com
URL:https://conet-net.com/

